電子定款作成・電子定款認証業務

いつもありがとうございます。田川です。
すっかり過ごしやすくなりました。

先日にこちらで書きましたが、無事業務完了しましたので
続きを書きたいと思います。(長いです 汗)

<株式会社の設立の際の電子定款作成・電子定款認証の受け方> 〜行政書士が嘱託人~

会社を作ろうとしたとき、まず必要になるのが定款です。定款は発起人が作成しますので、
その発起人から委任をうけ、行政書士が作成の代理人(嘱託人)となります。

そもそも定款とは何でしょうか?
定款とは、会社の設立時に発起人全員の同意のもとで定める「会社の根本の規則」です。定款には会社の事業内容や商号、
住所といった基本的な情報に加えて、会社の指針となる様々な規則を記載します。

会社設立時に作成された定款のことを「原始定款」といいますが、この原始定款は、株式会社の場合、
作成してそのままの状態では定款としての効力がありません。
公証役場で公証人に正式な定款として認めてもらうことではじめて効力が発生することになります。

定款の認証とは何でしょうか?
定款の認証とは、定款の正当性を「公証人」に証明してもらうことを言います。定款の認証を受けておくことで、
設立当初の定款の内容を公的に証明できるようになります。のちに会社内での相続などのトラブルなどが起こった時に、
定款の内容の正当性についてもめ事などのリスクヘッジできる点がメリットでしょうか。定款の認証は、設立の登記前に手続きを必ず行います。
上記のとおり、公証役場にて「公証人」が、当該作成した定款を認めることを定款の認証といいます。
会社の設立における定款の認証手続きが必要なのは、株式会社のみとなっています。
持分会社である合同会社・合資会社・合名会社では定款の認証手続きは不要です。(他の法人については割愛しています)

定款の認証はどこで?
定款の認証は、本社所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。管轄区域外の公証役場では定款の認証ができないので、
あらかじめ管轄の公証役場を調べておきます。

定款の認証は、従来からの紙の定款を作成しそれを認証してもらう方法と、
紙ではなく電子データ(PDF)により作成した定款を認証してもらう方法があります。

まず、紙の定款を認証してもらうための書類については、以下のものが必要になります。
◎紙の定款の場合。
定款3通
発起人の印鑑証明書(全員分)
実質的支配者となるべき者の申告書
収入印紙(紙の場合のみ):4万円分
認証手数料:3~5万円(資本金の額により)
参照 日本公証人連合会HP
定款の謄本交付手数料:1ページにつき250円
委任状

紙の定款はこれぐらいにして、電子定款について説明します。
◎電子定款の場合
従来、定款の認証は紙でのみ行われていましたが、インターネットとパソコンの普及により、オンラインでも定款の認証を受けられるようになりました。
(だいぶ前ですが)
また、電子定款の認証の場合は収入印紙代4万円分が不要となります。収入印紙の決まりは印紙税法に規定されていますが、
はっきりと電子定款(電子契約)について非課税となる旨の文言はありません。気になる方は国税庁HP
行政書士であれば、インターネットやパソコンの環境が整っていると思いますので、
電子定款を活用することでお客様は費用を安くおさえられます。

電子定款で認証を行う場合のおおまかな流れは以下のとおりとなります。
*電子定款認証に必要な、「申請用総合ソフト」などのダウンロードは済ませていることを前提といたします。
1.Word他ワープロソフトで電子定款案を作成する(電子証明書の申込み)
2.実質的支配者となるべき者の申告書を作成する
3.管轄の公証役場に問い合わせの上、定款案をメールやファックスなどで送付し、内容と誤字脱字を確認していただく
4.電子定款をPDFファイルに変換し、PDFファイルに電子署名をする
5.管轄の公証役場に電話、HP等で認証の手続に行く日時を決定する
6.署名済みの電子定款を法務省の「登記・供託オンライン申請システム」で指定の公証人にオンライン申請する
7.管轄の公証役場に、オンラインから電子定款の認証申請を行った旨を連絡する
8.認証日に必要書類と、手数料を持参のうえ公証役場で手続きを行う

以上を踏まえて、まずはお客様に設立する会社についてヒアリングし、原始定款案を作成します。定款には、
①必ず記載が必要な事項である「絶対的記載事項」
②記載は任意であるが記載されている場合にのみ効力が生じる「相対的記載事項」
③規定に違反していない限りどのような内容でも記載ができる「任意的記載事項」
があり、任意的記載事項は、記載が無くても無効とはなりませんので、効力が認められないこともありません。しかし、定款に記載することによって、
拘束力を持たせる等といった効果がありますので、十分留意する必要があります。
私の場合、定款の作成はWordで作成しましたが、他にも一太郎等のワープロソフトでも作成が可能みたいです。フォントはMS明朝、サイズ11で作成し、表紙も作成しました。
注意したいのが、発起人の氏名に旧字(外字)が含まれる場合は、文字化けしないフォントであるか事前にチェックしておいた方がよいです。
ちなみに私も、定款案を公証人さんに事前チェックしていただいたときに、発起人氏名の外字の文字化けを指摘していただき、修正を行いました。

また、行政書士が定款作成を業務として行う場合には、事前に電子証明書の準備を進めておく必要があります。
電子署名の際に必要となる、下記のサイトより電子証明書の取得手続きを行います。
セコムトラストシステムズ株式会社
注意事項として、電子証明書の取得までには手続きを始めてから取得するまでに約2、3週間かかってしまいます。お急ぎ案件ならこちらの手続きが1番かもしれません。

電子証明書は有効期間によって料金が異なり、2年間で14,000円(税抜)、3年間で21,000円(税抜)です。(商工会員の方は少し割引があるみたいです)
こちらは、行政書士として電子定款作成・認証業務を受任するにあたり必須となる費用として年額7,700円は割り切るしかありませんね。

原始定款案が固まりましたら、次に実質的支配者についての「実質的支配者となるべき者の申告書」を下記サイトより、作成いたします。
実質的支配者となるべき者の申告書(日本公証人連合会HPより)

下記、実質的支配者の(1)~(4)の条件のどれに当てはまるかのチェック及び、実質的支配者の情報(住所、国籍、生年月日、暴力団員等に該当するかなど)により申告書を作成します。
1)議決権の直接保有及び間接保有が50%を超える自然人
該当者がいればその1人が実質的支配者です。
※ただし、事業経営を実質的に支配する意思または能力がない場合は(3)の条件で判断
2)議決権の直接保有及び間接保有が25%を超える自然人
1に該当者がおらず2に該当者がいた場合、2の該当者全員が実質的支配者になります。
※ただし、事業経営を実質的に支配する意思または能力がない場合は(3)の条件で判断
3)出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力のある自然人
1と2で該当者がいない場合や該当者に実質的に支配する意思や能力がない場合は、3の該当者すべてが実質的支配者になります。
4)代表権を持つ取締役
1~3に該当者がいない場合は代表取締役が実質的支配者になります。

発起人1名で、設立取締役1名の株式会社であれば1)となることが多いのではないでしょうか。行政書士が受任した場合、行政書士が嘱託人となり、
令和4年1月1日より押印は不要となっています。  参照 日本公証人連合会HP

定款案と実質的支配者となるべき者の申告書をWordで作成したら、これを「PDF」化していきます。
私の場合は、Word画面の左上にある「ファイル」から「エクスポート」に進み、「PDF/XPSの作成」押下してPDF化します。
ここまでは、私も日常業務で行っていることなので比較的簡単です。
少し難解なのがここからの作業になります。
作成したPDFファイルに電子署名を行いますが、その際に日行連のWEB研修や、法務省のHPなど、何回も見ましたが私にはなかなか理解が難しかったです(汗)
まず、PDF化のソフトについて有料の「Acrobat Pro/Standard DC」や、「Sky PDF」が前提の説明となっていること、
電子署名の付与について「Signed PDF」を使用することを要するような説明になっていると私は感じました。
その他色々なHPを見ながら私なりに解釈できたのが、「登記・供託オンラインシステム」のHPで「Adobe Acrobat Reader」の電子署名の付与についての記載を見つけました。
HP上の、「電子署名付きPDFファイルの作成にあたっての留意事項
次の方法で作成された「電子署名付きPDFファイル」については,上記の電子署名形式及び設定値を満たしています。」とあり、青ポッチの3つ目に、
Adobe Acrobat Readerの電子署名機能を使用して作成した「電子署名付きPDFファイル」とありました!

これにより、個人的に現在の業務では「Acrobat Pro/Standard DC」は特に必要なかったので不要な出費を抑えられることができました。
電子署名の付与のしかたは、PDFファイルで電子署名を利用する方法をチェックしながらあっという間に完了しました。
手っ取り早く説明しますと、PDFファイルのAcrobat Reader DCの中で、
①左上メニューバー下の「ツール」をクリック
②「証明書」のアイコンをクリック
③画面真ん中の上の「電子署名」をクリック
④電子証明書を付ける場所をドラッグして指定
⑤電子証明書ファイルの指定を行う
と、こんな感じで完了です。

電子定款に電子署名の付与ができましたら、公証役場に認証日の予約をします。
今回の管轄の公証役場は、HPに予約フォームがありそこから送信しました。
公証役場から直ぐに返信していただき、認証日時が決定しました。
通常は1週間後くらいでしょうか。

それから、申請用総合ソフトを利用して管轄公証役場の公証人さんへ電子定款をオンライン申請します。電子定款のPDFファイルに電子署名していますが、この申請時にも再度電子署名をします。(ダブルチェックって感じでしょうか)
無事に申請できましたら「到達」表示となり、当内容のお知らせメールが送られてきます。
その後は、認証日当日まで審査中となっています。(これは表示については公証役場によって違ってくると思います)

認証日当日は、
①委任状(定款を袋綴じしたものに発起人全員が押印、割印)
②発起人全員の印鑑証明書(3カ月以内)
③データを保存するCD-R等(私がお願いした公証役場はくださいました)
④行政書士証、運転免許証、認印
⑤手数料
を、持参して、申告受理及び認証証明書、謄本(事前に部数をお伝えしておきます)
CD-R、電磁的記録の認証のプリント、領収書を受け取り、何もなければ2、30分で終了です。お疲れ様でした。

行政書士に登録して、恥ずかしながら初めての電子定款の作成、認証手続きを行ったので備忘録的に書かせていただきました。
私はパソコンやインターネット等の知識は全くありません、あくまで個人的な方法ですので参考にしていただけるなら自己判断、自己責任でお願いしますね。